――……ねぇ、君は覚えてる? 君に初めて会った、あの日の事を。









 やっぱり、君でよかった








 『―― 卒業生、退場』

 長ったらしい、卒業式も終わった。あの寒くても、思い入れのある、何より『君』に出逢った

 体育館を出て行く。

 そのまま、教室に向かうクラスメイト達。あたしもそのまま混ざって教室に向かっていた。


 「ねぇ、星野さん?」

 
 クラスメイトで、あまり話したこともなく関わりたくもなかった、少し髪の毛が金色の女の子

 ―― 今井さんが教室で初めて向こうから話しかけてきた。

 
 「何?」


 早く、"あの事"を済ませたかったから、あたしは少しウザそうな顔をして今井さんを見た。



 「そんなん、睨まないでよぉ。さっきねぇ、4組の雅人くんって人に話しかけられてぇ」



 ――"雅人くん"

 あたしは今日その人に、"告白"する。その言葉が出てきて、あたしはハッとした。


 「さっきねぇ、雅人くんがねぇ」

 
 いいから、そんな長ったらしい意味の無いタメはやめて早く話さんかいぃ!と思ったけど、

 やっぱり冷静になったほうがいいと思ってあたしは無表情で今井さんを見つめていた。



 「星野さんを探していたみたいよぉ? 体育館にいるってぇ」

 「え?」



 うそ、何で雅人くんが?

 …雅人くんとは、同じバドミントン部よく体育館で話していた。…けど、あまり話さずに終わって

 しまいそうだったから、今日告白しようって思っていた。



 「告白されるんじゃなぁい? 行ってみなよぉ」

 「う、うん! ありがとう!」


 
 今日は、何かいい日かもしれない。嫌いだった、やたらキラキラしている女の子が今では

 可愛い(ちょっと話し方がイライラするけど)キューピットに見えた。


 
 教室から、体育館までは階段を降りて渡り廊下を渡ればすぐだった。だけど、その短い道のり

 が今では長く感じられた。

 早く、雅人くんの元へ行きたい!

 …お願い! もう一度、君でよかったと思わせて!



 ―― 1年前、あたしは雅人くんが好きだったのにも関わらず、同じクラスの石本くんと

 3ヶ月だけ付き合っていた。

 …たった3ヶ月だったけど、苦しかった。雅人くんの代わりになる人なんていなかった。

 しかも、石本くんを傷つけてしまいそうだったから。

 

 そんな事を思い出しながらも、あたしは体育館に着いていた。あんなに人がいて、

 騒がしくって、明るかった体育館はもう真っ暗だった。



 「雅…人くん?」


 
 いるかどうかも分からないのに、あたしは雅人くんの名をつぶやいた。


 ―― バンッ

 
 いつも聞いてる、体育館の灯りが点く音がいきなり鳴り響いてビクッと驚いた。

 次々に明るくなる体育館の隅部屋から、いつも見ている雅人くんが出てきた。


 「よぉ。元気か?」

 「ども。うん、元気だよ」

 
 いつもしているような会話でも、どきまきしながら声を出していた。

 どうしよう、すごく緊張する。

 1mぐらい離れて立っている、雅人くんの目を見つめ次の言葉を待った。


 「あの…」

 「あのさ…」


 2人同時に話し出して、あたしたちはプッと笑っていた。


 「星野からいいよ」

 「えっ、いや、雅人くんからでいいよ!」


 あたしは顔が熱くなるのを、全身で感じているみたいだった。それほど緊張していた。


 
 「……星野の事が、好きだったんだけど」

 「…マジ?」


 何か、信じられなかった。今井さんがああ言っていたのにも関わらず、あたしはまだ信じて

 いなかった。あたしが聞き返して、真っ赤にしている雅人くんはまた口を開いた。


 「……こんな恥ずかしい事、何度も言わすなっ!」


 そう言う、雅人くんがとても愛しく見えた。


 「あたしも、好きだよっ」

 
 あ、ヤバい。涙出てきそう。今泣いたら、雅人くんを困らすだけだよ。


 「マジ?」
 
 「もうっ…、恥ずかしい事何度も言わせないでよっ!」


 そう言う顔が真っ赤なあたしを見つめて、雅人くんはあたしを抱きしめていた。









 ねぇ、君はあたしでよかったと思っている?


 …あたしは



 『やっぱり、君でよかった』



-END-